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ご無沙汰しておりました、生きてます。職場で色々変わったのでひはひはしつつ毎日を慌ただしく送っております。
あと、携帯が遂に任務遂行しました。
ありがとう相棒。いい人生だったぜ!的な。
しかし最後辺りの稼働の悪さは心臓に良くないですよね。
さて近況はこの辺りで終いにしてリハビリがてらのクイロクです。続きからどうぞ!
ロボットは再起不能の鉄くずにならなければ利用可能で、でも記憶は簡単に消せたり色々な情報を蓄積する事が出来たり
ふと考えた事がある
それは自分の中の小さな断片がそっと囁くのだ
いつまで壊し続けるの、と――
家庭用ならば様々な料理のレシピや日常生活における家事の内容を覚えて繰り返せば良い。だけれど戦うとなれば相手を破壊するだけではなく自分だって破壊されるのだ。
人間が溜まったストレスを発散するのとは次元が違いすぎる。動力炉を破壊されて、データも完全に失ったら……一体のロボットとして死ぬ。それは相手も同じ事。だけれどロボットだからこそデータさえ常に取ってコピーしておけばまた違う自分が作られる。
それこそ、簡単に。
考えてゾッとした。ひょっとして自分はデータという情報だけが存在して、この今の機体は自分じゃない自分なのではと。一度そのほの暗い闇に触れたら、中々払拭出来ない。
途方もない虚しさと恐怖に胸が軋んだ。
だれかたすけて、と、声に出せない悲鳴は全身を縛り付けた。
その所為か、最近スリープモードに移行するのに戸惑い、上手に休めない。博士にメンテナンスをしてもらう時はそれでも構わないけれど、きちんと休息を取らなければ機体に支障が出る。頭で理解しても、どうしてか落ち着けないのだ。
また今晩、自室のベッドの上で何度も寝返りを打つ。壁掛け時計の規則正しい針の動きが更に焦りを生み出す。
ああどうしよう、これじゃ緊急を用する時に上手く働けないかもしれない。焦燥感がじわりじわりと内側から蝕む。
どうしよう、変に考え過ぎて思考が上手く接続出来ていないんだ、取り敢えず状況整理をして落ち着いて……すると、ロックが横になるベッドの裾から闇に紛れて黒いモヤがじくじくと迫ってくるのだ。勿論それは存在などしていない幻覚である。
吸排気が詰まる。動作が一瞬だけ止まる。慌ててベッドから飛び退いて部屋の電気を点けると普段と何ら変わりのない部屋が蛍光灯の下に広がるだけ。
どうしようもない気持ちに電気を消すと他の誰も起こさない様気配を消して、いつも外出の際に履くスニーカーに履き替え静かにライト家を出る。
住宅地の中は静まり返っているが街の方の夜空は地上の数え切れない灯りを反射して仄かに明るい。街も人もロボットも眠らない、必ず誰かが起きている世界。
もしかしたら、この自分の中で生まれるやるせなさを昇華させる事が出来る誰かが、一人や二人居るかもしれない。その誰かに出会う術は、分からないけれど。
そう思えばほんの僅かにざわめく胸が落ち着く。
軟らかい靴底が舗装されている道路を進んでも騒音にはならない、そうして歩く内に児童公園が見えて街灯が照らし出すその敷地内に足を踏み入れた。時間帯的に遊具で遊ぶ子供や親子連れの姿は無い。
初めブランコにでも腰掛けようかと悩んだが、どうせならばと4人掛けで座れる四角い大きなブランコに乗る。
ロックの体重でかたん、と片方に傾くが変な傾斜が付く訳ではないのでその侭腰を落ち着けた。
近隣の住民には迷惑を掛けない程度で、防犯には役立つ街灯はロックを見下ろす無機質でノッポな作り。闇にぼんやり光を届けるそれが、ロックから伸びる影をより一層際立たせる。
影は語る、君は壊し過ぎだよ。と
破壊なら誰にでも出来るのに。と
“守る”なんて大義名分の元で君は破壊を楽しんでいるだけじゃないの?と
罪悪感なんて、ないじゃないか。 と。
ぎゅう、と詰まる胸が苦しくて着ていたシャツの胸元を小さい手で握り締めて誤魔化す。
僅かな矛盾を感じていたのは前からで、だけれど敢えて考えないようにしていた。それでもそれは口には出せなくて、笑顔の裏に仕舞い込む。小さな体に見合わない大きな心は重責にぎしりと鳴く。
ふと、ブランコに腰掛けているロックの隣に気配が一つ降り立つ。敵の、殺意が剥き出しのものではなく良く知っているものだ。
かたん、と過重で生じる揺れは水に落ちた水滴の波紋の様に静かになる。彼はロックの向かい側に座るが、小さいロックとは違い少々窮屈そうだ。ロックの膝と、彼の脛が合わさる。
「怖いね、夢を見たんだ」
ぽつりと零れた呟きと同時に、まろやかな頬をほろりと透明な粒が一粒転がり落ちた。
家族には心配をかけまいと何でもない装いをしても、彼が傍に居るとつい口から吐き出してしまう醜さ。彼はロックを咎めるでもなくただ寄り添いぽつぽつ弱音を零す場所を提供してくれるのだ。
「だけど、今はもう大丈夫。…ごめんね、ありがとう」
服を握り締めていた小さな手に、大きな手が重なると皺の寄った服から引き離されその侭包まれる。歪みそうになる口元をきゅ、と引き締め赤い機体の硬い装甲に額を押し付けた。
「あとほんのちょっとだけでいいから、ごめんね、こうさせて」
返事の変わりに手が握り込まれる。元より他人と関わろうとしない彼は不器用なりにロックにしか分からない優しさを見せてくれるのだ。
「ありがと、クイック」
嫌な言葉を囁く影も闇に引きずり込む真っ暗いモヤも其処には姿形も無い。あるのは優しい沈黙の作り出す空間。
(ごめんね、なんて悪い事をしていないのに謝罪されるよりもありがとうを沢山聞きたいんだ)
2011/07/10 速岩(クイロク) Trackback()
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