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- Newer : オンリーですのよ!
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このお話は
・ロックが人間の子供
・怪我等の痛い表現があります
それでもいいぜ!な方は下記続きよりどうぞ。 自分達ナンバーズを作り上げた博士の目の上の瘤で邪魔になっていた博士の孫をこんなにも、いとも容易く誘拐出来てしまうと本当に博士の障害物になるものか疑わしくなる。
兎にも角にも、先ず第一の目的は達成した。
はじめまして、ぼくは
意識の無い身体はぐにゃりと柔らかく、どこもかしこもひょろりと頼り無く細い。今は閉じられている瞳も、映したものを完璧に記録し保存する機能を持っていない。
そして呆気なく簡単に死んでしまう。それがヒト。そのヒトの子は目が覚めて状況を把握しても騒がなかった。
普通ならば危機的な事に懇願なり混乱するであろうに、静かに座って自分達ワイリーナンバーズを見ているだけだ。
「驚いて声も出ないか」
メタルが子供に問い掛けるとその子供は首を横に振るい、静かに笑うのだ。
「博士の事をよく思わない人達に、結構こういう目に合わされてるから」
表情とは全く真逆の内容を口に出来る子供が不気味に思えるのはセカンドナンバーズ全員の一致。子供とは本来もう少し本能的に動いても良いんじゃないか。むせび泣いて、許しを請う。それが今まで見て来た人間の姿なのに子供は全く予測していないパターンだ。
壁に寄りかかって膝を抱え静かに目を閉じ座る。ただそれだけ。
「取り敢えず、暫くはこの部屋で大人しくしてもらう」
「殺さないの?」
驚いてきょとんと目を丸める様に逆に脅かされる。何を言っているんだコイツはと。
「殺されたいのか、ガキ」
「ううん、そういう訳じゃないよ。だけど逃がさない為にってまた怪我させられるのかなと思って。」
「オレ達はワイリーナンバーズだ、んな必要ねえよ。テメェが出てける隙なんてありゃしねえ」
突き放す乱暴な言葉を吐き捨てるフラッシュに、ほっと安堵の表情をする子供に心底不気味さを感じさせられる。矢張り気味が悪い。
次々部屋を後にするロボットを見詰めていた子供が声を上げる。
「ボクの名前はロック。知ってると思うけど、今のうちに自己紹介しておこうと思って」
にこり、と笑う様が異様に恐ろしかった。
システムで監禁部屋を見張っていても気配がぴくりとも動かない事に本当はあの子供はダミーか何かで本物は別に存在するのではと疑い始めた頃、前線に着いていないメタルがロックの居る部屋に食料を届けに足を運んだ。
自動ドアが開くと顔を上げて姿を認めたらその手に持たれている物を見て判断したらしい、受け取るべく手を伸ばし暢気に「ありがとう」と礼を述べられて調子が狂う。
「お前は変な子供だな」
「うん、きっとそうかもね。いただきます。」
両手をきちんと揃えて携帯食料を食べ始める。躾がちゃんとされていると感心すべきか、呆れるべきか判断が鈍る所だ。
「何故逃げない」
「逃げた方がいいの?」
本当に可愛げが無い。
もくもくと食べる様子は人間らしいのだが冷静過ぎる。ならばと一瞬でひたりと喉元に鋭利な自分の武器をあてがうと確かに僅かに怯んで、だが、だからと言って狼狽えない。
「貴様、ライト製のロボットか」
端的な問いにロックが人差し指の腹を徐に武器に触れさせた。途端一筋の赤い線が走り、鮮やかで鉄の様な生臭い赤が流れる。
「ボクは人間だよ。この傷も凄く痛いし、これは人工血液じゃなくて本物の血だし、ロボットみたいに直ぐに治せない。残念だけどただの、人間だよ」
痛いねこれ、と眉を八の字に笑う表情とちぐはぐな会話の内容に自分の回路がおかしくなってしまったのかとメタルは思う。頭がおかしいのは、
「なんで逃げないか、って聞いてたよね。逃げないんじゃなくて、逃げられないんだ」
無表情でぽつりと呟かれた言葉は無機質な部屋に静かに消されていった。
「その言葉が意味するデータを探してみたら、こんなのが出て来たぞ」
頭脳派であるフラッシュが探し当てたデータが大型モニターに映されるとライト博士の孫が誘拐され、怪我をしたという小さな記事だった。具体的にどんなもので何処かとは記載されていないが、フラッシュが別にハッキングして得た病院の電子カルテの文に目を通し納得する。
「――――“左足アキレス損傷(刃物による切断)、”か、成る程」
単純でいて、逃がさない為にはもってこいな手段ではあるがロボットよりも相当エグい手を使うもんだと感心する。人は醜くて愚かだとも。
「普段から歩行を補助する器具を着けていたとの情報もある、自由に足を動かせないならば逃げ出せはしないだろう」
警戒から一度引き上げていたエアーの言葉に同意し、部屋の監視は個体識別で鍵が解除されるだけの状態で良いと判断した。逃げられるものならば逃げてみろ、とも。
モニターの中央にぽつん、と映る子供は矢張りどこかをぼんやりと見ているだけだった。
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