ふたり ならんで あるける しあわせ(落書き)
で書いていたテキストです。宜しければ下記続きよりどうぞ。
一人、いや、足下の自分の影を供にして引き連れ目的の無いままに歩き続ける。
もしあの時に戻れるならば己はあの子供を失わない方向に変えられていただろうか?結果論に対しての自問自答、もしならばの仮説が己の回路をぐるぐるぐるぐると回る。
独り、何かを探す為に目的地もない旅を始めて地面を這う自分の影が相方になっていた。
だがそれは喋る事も無い、問い掛けに返事がある訳がないそれに呟きを落とす。
「俺は一体、何を探し見付けそれに対して何をする積もりなのだろうな」
自嘲を顔に貼り付けその後は黙々と歩みを続け、自分以外の有機物が存在しない場所から少し朽ちた建物が遠目に確認出来ると取り敢えずその場所へと足を進める。
そのエリアに辿り着く前に、“それ”と遭遇した。
欠落した左腕の場所は端が処理されたコードが覗く肩口、右手は内骨格が剥き出しで、元から残っている左足の対になるべく右足の付け根からは申し訳程度の足の代用品である金属のプレートでそれらしい形をしたものが簡単に取り付けられ、顔は右半分近く陥没してカメラアイが収まっていた眼窩が虚ろな闇を作り、左目のカメラアイは摩擦でやられたのか曇っている。
薄い鉄板らしきものが小さな機体のあちこち打ち付けてあり小さなロボットの体を包む人工皮膚は所々爛れ内部の回路が覗き見えた。
それが、半場無理矢理に取り付けられている足の所為で不自然に傾いだ侭、此方をじっと見詰めている。
動力炉が、ぎしりと軋む感覚。歩みを進めていた二本の足が歩く格好で止まる。
「…誰、だ、です…カ、なンだ、」
沈とした空気を震わせたのは、それ――少年だ。どうやらロボットとしての初期システムは作動しているらしいが正常とは言い難い、人工声帯から出た声は所々割れてノイズが混じっている。
それに言葉を選択するのが不完全らしい事と喋る動作をするとそれ以外の動作を取るのが難しいのか依然としてその場所に傾いた棒立ちの侭だ。
「ダレ、」
再度の問い掛けにやっと我に返り硬直状態が溶けると目深に被っていた笠の鍔を持ち上げ、口元を覆い隠していた布を下げ左目だけで少年を見詰め返した。
「拙者は見ての通り旅の者だ、此方の方向に集落が見えたので寄った迄…お主、随分な出で立ちだが…何かあったのか」
動揺は見せないで平静は装えた筈だ、暫しの沈黙の後逆に問われた少年は音の割れた声で答える。
「いでた、チ?旅のとちュウ、なら、大丈夫だ、ろウね、とオモう、だロう」
自分の姿形に関しては特に疑問も無いらしい、問われた事で解らない所は思考から破棄したのだろう事は伺えた。バランスが危うい状態で踵を返すとギシギシと体の彼方此方から負荷の掛かった異音を立てながら歩き始めた少年の後を有り得もしない目眩に見舞われつつ着いて歩く。
煙をぶすぶすと上げ文字通り“墜落”して焦げ臭いニオイさせていた少年を拾い、あり合わせの物で“修理”した人間は、機械の修理はある程度出来る位でロボットの修理をした事が無いらしい、元からのデータも格好も復元出来ず興味本位でそれらしい格好をさせただけで終わったとの事だった。
この儘では近い内に起動を終えて鉄くずになるだろうなと何処かを見て言う人間から、ならばと少年を引き取る旨を伝えると、どうやら元からそんなに執着はそんなに無かった様ですんなりと少年を向かい入れる運びになったが、自分自身も修理修復に優れていないのと第一に材料も何も無いのだ。
ここまで歪になっているならば大きな研究所に運ぶしか手立ては無い、かと言っても自分の創造主の元へはとてもではないが避けるべきと判断し、ならば創造主と同じく技術のあるライバル関係の研究所はどうだ?しかしお互いに心中は複雑なものだからそれも出来れば回避したい、ならば後の思い当たる場所は――
意志を固めるとスリープモードに入った少年をしっかりと抱きかかえ、目的地の座標を割り出すと直ぐ様向かった。
[1回]
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2010/10/26
影複製(シャドコピ)
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